DRILL DESIGNの場合 <6>


北海道の道産材の伐採現場 / Photo:Takumi Ota


生態系ともの作り
横断的につながっていくデザイン


ATELIER MUJI GINZAで2019年に企画した一回目の「長く生きる。展」で、デザインのDNAを生物学的な視点から見てみたいと考えたんですが、今お話を伺って、お二人はデザインを横断的に捉えているんだと感じました。
最近、デザイン以外のところからインスパイアされたことは何ですか?
安西:林さんは生態系の勉強をしているというか、最近は本棚にデザインの本はなくて自然科学の本とが多い。それが、ものを作るっていうことに繋がっていくんですよね。私も *10『サピエンス全史』『ホモ・デウス』 を読んで、やっぱり生物ってものすごいと思いました。
デザインは、生物学から学ぶべきことが多々ありそうですね。
安西:そうですね、今後地球がどうなっていくか、マテリアルの使い方、プラスチックについてもよく話をします。
林:マテリアルは今後、真剣に気を使っていかないといけない分野ですね。何を使うのがいいのか、現在はまだ正解がない。プラスチックはダメって言っているけど、じゃあ再生プラスチックならいいのか、とか。その辺もきちんと理解していきたいと思っています。
そうですね。デザイン業界はもっと横断的に学んでいかないと。


▲DRILL DESIGNによるラタン家具のコレクションTOU / Photo:Takumi Ota



▲TOUコレクションの手編みによる座面 / Photo:Takumi Ota


林:僕たちは今のところ、マテリアルはラタンが一番いいんじゃないかって。
安西:そうですね、ラタンは再生が可能な素材なんです。
林:成長が早くて長持ちする。この座面のように、ラタンの皮を使ったり茎を使ったりすべて無駄なく使え、伐採してもまたすぐ生えてくる本当にすごい材料だなって。他にもそういう素材ないかなって思っているんですけどね。


▲TOUの原料ラタン材はインドネシアで栽培されている


安西:自然科学のような分野に興味あるのは、やはりマテリアルの次元から関わって仕事をしてきたことがすごく大きいです。「ペーパーウッド」を手がけた時、<瀧沢ベニヤ>の北海道の森まで行って、滝沢さんから植林の話、林業の話を聞いて、ああそうか…と。


▲DRILL DESIGNが手がけた合板 Paper-Wood / Photo:Ryokan Abe



▲瀧澤ベニヤの合板工場 / Photo:Takumi Ota



▲工場の外で保管されている丸太材 / Photo:Takumi Ota


安西:椅子をデザインするにも、その前段階であるマテリアルの調達に様々な仕事があり、日本の林業の様々な問題があり、そういうところまで遡って関わっていけるプロジェクトに私たちは興味があるんです。マテリアルとしての紙にも関わっているので製紙会社さんともよく話をします。彼らも森を持ち、木を持ち、製紙工場を持っているけど、紙が主流の文化はもう終わるから、次はどういうマテリアルを目指すのか、そんな話もしています。
紙の次の時代ですか。
安西:はい、紙の役割も大きく変わっていくと思います。製紙会社は利益を分散していかないと、というところもあると思います。
林:逆にパッケージは、脱プラの現代、紙の需要が増えているんですよね。
安西:そう、新たな紙の時代になっていくんじゃないかと思っています。
森、林業、木、紙。地球の環境と、原料、素材、そしてそれをどう製品にして使っていくか。私たちが関わらせてもらっているそういったことが、いつかうまく繋がって同じコンセプトを共有するプロジェクトになればいいなと思っています。アイデアはあるんだけれど、こうしたプロジェクトって多方面から人が集まらないとできないので、いつかきっとカチッとピースがはまって始動する時が来ると思っています。
私たちだけで考えていても何も動かないので、企業の人たちに会ったり、そのためのチーム作りをしたり。いつか形になればと、新たなダンボールやアルミ素材のプロジェクトも進めています。
私たち少し変わっていると思います、デザインスタジオとしては(笑)
変わったデザインスタジオ、大賛成です(笑)。そうしたデザインの新たなパラダイムが間もなく普通のことになる、と想像しています。



*10 共に、ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新社
(SAPIENS: A Brief History of Humankind 2011, Homo Deus: A Brief History of Tomorrow ©️ Yuval Noah Harari 2015)







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【了】



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