野生の手仕事と知恵 展 2021年9月10日(金)ー11月7日(日)

かつて山形県鶴岡市にあった「アマゾン民族館」と「アマゾン自然館」に展示・収蔵されていた民族及び生物資料は、2014年に閉館した後も後世へ残すための保護活動が続いています。生活工芸品約8,000点、生物標本・剥製12,000点と、個人収集のレベルをはるかに超えた文化人類学研究者 山口吉彦氏のコレクションは、南米 アマゾン川流域の先住民を中心に、そこに暮らす人々の生活に密着した道具からその土地に生息する生物標本に至るまで、幅広い資料が揃っています。氏が、1970年代から十数年に渡って、“物々交換”など現地の人々との直接のコミュニケーションから集められた品々は、ありのままの文化資源です。

 

自分たちが生活する周辺で材料を手に入れ、自ら道具を作り、その道具や知恵を使って生きる。そんな​アマゾン川流域に住む先住民の人々にも文明社会や環境破壊など大きな変化が降りかかり、民族の伝統や言語の消滅は進行していますが、少数になった今もなお、自然と極めて近い共存生活を続けている人たちがいます。

 

遠い過去の話や別の世界のことではなく、今日もこの地球で営まれているくらし。そこでは自然との関係や使い手のことを配慮した生きるための道具が作られてきました。それらの道具を作り続けてきた人たちの様々な思いが山口氏のコレクションには込められています。

自然、家族、民族、後世、そしてひとりの人間同士として。どの関係においても他者への慈しみなしでは存在しえません。様々な禍が起きる現在、一層多くの気づきや学びがあるように思われます。​

 

ATELIER MUJI GINZA

 


開催に寄せて

物のない時代、自然に囲まれた山形県・鶴岡市で育った幼少期の私にとって、何よりの楽しみは山や川での昆虫採集でした。また、昆虫以外の友達は、本でした。8歳のとき、手にした南米アマゾンの熱帯雨林の冒険記を読み、絶対にモルフォ蝶やヘラクレスオオカブトを自分の手で採りにアマゾンに行くと決めました。その後、留学したフランスの大学で私のアマゾンへの憧れは更に大きく膨れ上がりました。フランスの人類学者レヴィ=ストロースによる、南米の熱帯雨林で生活を営む先住民(インディオ)の思考の研究に胸を射抜かれたからです。

 

28歳で足を踏み入れた念願のアマゾンは、想像していた以上に広大でした。深い森の中に多種多様な命が絡み合い、過酷ともいえる環境下で、人間らしく助け合って生きる先住民たちの姿がありました。先住民たちと寝食を共にし、私は彼らが使う数々の道具が「人が森で生きるために必要な魔法が込められた良いもの」であると気付きました。かくして、私は幾度となく奥深い森に住む先住民たちを訪ねては、彼らの生活の道具を物々交換等で収集してきました。そのときは無我夢中でしたが、気付けば集めた民族資料は膨大な数となっていました。

 

現在、半世紀前に収集したアマゾン資料を眺め、交流を交わした先住民たちの顔を思い浮かべます。電気も水道もない当時の先住民の生活は、現在の日本と比べると不便かもしれませんが、必要なものは森から与えられていたので豊かでした。皆、幸せな顔をしていました。

 

アマゾンの森は先住民にとって生活の全てで、同時に森が消滅すれば彼らも滅びます。自然と人間の生活の調和の証でもあるアマゾン先住民の品々は、パンデミックや自然災害に悩まされる近代社会に住む私たちに語りかけます。そのメッセージを伝達することが私に残された最後の使命です。自然を搾取し征服するのではなく、共に存在する道を選んできた先住民の知恵から、私たちにも共通する「人間らしさ」と「豊かさ」を見出していただければ何よりです。

 

山口吉彦

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関連イベント:
本展覧会中は、各種イベントの開催を予定しています。
詳細は決まり次第、ATELIER MUJI GINZA公式サイトやSNSで随時お知らせ致します。
時間:
11:00 ― 20:00
* 営業時間は店舗と異なります。休館は、店舗に準じます。
* 会期や時間などの予定変更、またはイベント等によって展示品の一部がご覧頂けない日時が発生する場合がございます。
開催場所:
無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery1
入場無料
主催:
良品計画
協力:
一般社団法人 アマゾン資料館、株式会社 マザーディクショナリー、日知舎
施工:
HIGURE 17-15 cas
グラフィックデザイン:SARAVAH design
企画・運営:株式会社良品計画 企画デザイン室・無印良品 銀座 ATELIER MUJI GINZA