素材の源流を辿る
『渡し舟ーからむしの営み』展 2023年11月3日(金)ー 2024年1月28日(日)

世界各地の営みの中で受け継がれてきた伝統的工芸の多くは、生活様式の変化、作り手の高齢化、後継者不足など、時代の移り変わりとともに様々な課題に直面しています。

『素材の源流を辿る』は、様々な課題に向き合いながらも、昔とかわらない原材料と伝統的な技術で作られる素材や作り手に目を向け、背景を理解するとともに文化として丁寧に伝えることで、共感や新たな価値の創出に繋がるような、ものづくりを紹介していく取り組みです。

「からむし」は、苧麻(ちょま)とも呼ばれるイラクサ科の多年草。少なくとも江戸時代より福島県昭和村で、からむしの栽培がおこなわれています。この村で作られるからむしの質は特に高く、「越後上布」「小千谷縮」などの最高級織物の原料として重宝されてきました。しかし、ライフスタイルの変化や過疎化により、代々受け継がれてきた技術を継承する人も少なくなっていきました。

歴史あるこの村でからむしをより多くの方々へ知ってもらう取り組みとしてスタートした「からむし織体験生『織姫・彦星』 事業」に応募し、からむしの営みに魅了され、その後も昭和村でからむしとともに暮らす、渡し舟 (渡辺悦子さん・舟木由貴子さん)の2人。昔ながらの方法で栽培から収穫、織りまで、季節の巡りに応じて植物と向きあうものづくりをおこなっています。

今展示は、『季節に根ざしたからむしの栽培』、『渡し舟ーからむしの営み』、そして『これからのからむしを探る』の3部構成です。

この展示を通して、伝統的技術から生まれる素材の素晴らしさとともに、渡し舟が綴る自然との営みを知ることで、これからの私たちの暮らしや社会について考えるきっかけになればと思います。

ATELIER MUJI GINZA

 


からむしは時空を超えて

素材の面白みの一つは、素材を通して、過去の人たちと会話ができることだと思います。昭和村でのフィールドワークを数年にわたり取り組んでいる哲学者の鞍田崇さんの手引きにより、からむしの刈り取りを見る機会がありました。2022年、 四季の変わり目「土用」の日のことです。4時30分、日の出とともに一本一本、刈り取りが始まりました。刈り取ったからむしは冷水に浸け、その日のうちに皮を剥ぎます。その皮を金具で引くと青く透き通る繊維「きら」 がとれます。一連の工程は日の入りまで続き、その過程で生まれた残渣(ざんさ)は畑に戻し、土壌づくりへと見事な循環を描いています。
また、からむしは私たち人間と同じで、一本一本の個性は千差万別、存在は唯一無二。縄文から受け継いできた先人たちとの会話は不可能ですが、今も続くからむしの布づくりの営みを通して、私たちは彼らと時空を超えて一体になれる気がします。

須藤玲子(テキスタイルデザイナー)

 


このたび、無印良品がこの小さなものづくりの源流に目を向けてくれたことは、本当に大きな驚きと喜びでした。昭和村の営みはとても小さく、今のわたしたちには大きなマーケットに応える事はできません。けれど、この営みには確実に人間が自然と共に生きていくうえで重要なメッセージが隠れています。
無印良品が世界中に提案する「感じ良い暮らし」と、この小さな小さな営み… その両者の根っこが地中深くでつながっていることを強く願ってやみません。それが、未来のより美しい暮らしを創っていくのだと…

渡し舟(渡辺悦子・舟木由貴子)

 

 

営業時間:
11:00-21:00

会場:
無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery1・2 入場無料

*休館は店舗に準じます。会期や時間などの予定変更、またはイベント等によって展示品の一部がご覧いただけない日時が発生する場合がございます。

関連イベント:
本展覧会中は、イベントの開催を予定しています。詳細やお申し込みについては ATELIER MUJI GINZA 公式ウェブサイトや SNS で随時お知らせ致します。

 

主催・企画|株式会社良品計画/展示協力|渡し舟(渡辺悦子・舟木由貴子)/空間構成|たしろまさふみ/グラフィックデザイン|森田明奈/映像編集・音響|春日聡/映像|記録映画『からむしのこえ』(監督 分藤大翼/製作・著作 国立歴史民俗博物館/2019年)より/協力|須藤玲子/ 柚木沙弥郎 / BUAISOU / 国立歴史民俗博物館/外山亮介/門元有寿/山内えり子/八須環/施工|HIGURE 17-15 cas